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『毬』2007.02発行 Vol.005

警笛がけたたましく鳴って、電車が止まった。
「踏み切りで車と接触」とのアナウンスが車掌から入った。
レスキュー隊や救急車が線路脇の道路に駆けつけ、あわてふためく乗務員が窓から見える。
どうやらしばらく、私の乗り合わせた電車は動きそうにない。
お昼前で、満員時ではなかったが、メールを打つ乗客。
日頃のマナー遵守を忘れて、携帯電話で遅刻する旨を大声で告げる人。
車内に重苦しい空気が充満している。

この電車に私が乗り合わせたのは、まったく偶然である。
それは他の乗客も変わりはない。「運命」である。

「この電車に乗る選択をしたのは自分であり苛立っても仕方がないよね、乗客の皆さん」と心の中でつぶやいてみた。
大切なのは、その後。
宿命生まれ育った環境や生年月日は変えられないけれど、運命は上から塗り替えられる!
大事な商談に遅れたとしても、暖かく迎えてくれるお客さんがいる。
煙草の本数がちょっと増えたとしても、喫茶店で待ってくれる愛する人がいる。
そうした人の中で、自分の「運命」が紡ぎだされていく。
でもそれには自分の「運命」を開拓しなければそうはならない。

人は出逢いによって気付きを得、努力しながら人間としての厚みをつけていく。
愛する人ができ、又恋い慕う人ができたとき、その人に、その人の笑顔が見たくて・・・頑張ったね!と誉めてもらいたくて、人のために一生懸命になれる。
そうすれば、電車が遅れたとしても、小走りに、謝りながらやってくるあなたを大切に思ってくれる人が必ずできる。
折角、命を授かり、人生の旅をして行くならば、変わらない「宿命」に拘泥するよりも、自分の運命を自主性に開拓していくことで、素晴らしい輝く明日を手に入れられる。

夢をあきらめないで!

電車は幸いにも案じていたより短時間の停車の後、無事動き出した。
時と場所を共有した様々な人の「宿命」と「運命」を乗せて。


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